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読み物としてもすごく面白かった「コミュニティー・キャピタル論」

先週の出張の行き来の半分はうたた寝、もう半分はこれだった。自分的に面白がれるポイントがつまっていて、食い入るようにほぼ往復の移動だけで読みきってしまった。これを新書にした編集者、えらい!(元は分厚い学術書があるようだから、おそらく編集者の手柄という推測)


コミュニティー・キャピタル論 近江商人、温州企業、トヨタ 、長期繁栄の秘密 (光文社新書)

面白かったポイントを3つほどにまとめてみる。

ポイントその1は、時と場所を超えているところ。三方よしで知られる近江商人の詳しい歴史、現代を生きる中国温州の企業、トヨタのサプライチェーン、と異なる時と地域の話が同じ仮説のもとに紐解かれる面白さ。しかも、歴史上の人物も実在する人も、多くは実名ででてくるので、人間くささがにおってくるよう。

ポイントその2は、よくある起業家の成功談みたいなのではなく、成功する組織、危機に強い組織は、どういうコミュニティ構造を持っているのかという問いをもとに語られているところだ。いっときたくさん本がでた、ネットワーク理論のおさらいをすることもできる。(余談だが、コミュニティの規模は異なるがMITの先生の研究が紹介された「ソーシャル物理学」と似たような結論がでてるのも面白い)

ポイントその3は、書名に「長期繁栄」とあるところにつながる。つまり、うまくいった人、組織のことだけでなく、コミュニティの周縁というか、それほど活躍しない人についても時にスポットをあて、その人がコミュニティとどういう持ちつ持たれつの関係を築いているのか(持たれつの方が多いようですけど)というところも紹介されているところだ。親戚を頼りに海外に渡り、言葉もままならないのに、ネットワークに守られながらそれなりに生きていけているエピソードは、何か希望すら感じる。

そして、これらの考察や分析は、その他のいろんな人や組織に照らし合わせて考えることができるというオマケつきだ。ソーシャル・キャピタルよりは、狭いコミュニティ・キャピタルという仮説の設定も絶妙だと思うが、その仮説の精度よりも、こうして時と場所を超えた想像をぐるぐるとめぐらさせてくれるところが良い。広く読んでほしいという新書の形式なので、そういう方向で書いてあるのだろう。そして、それは私に対しては大成功している。


ただ一点、ネットワーク構造が気になって、自然な友達づきあいがやりにく…
最近の投稿

Jan Chipchase's The Field Study Handbook

デザインリサーチの世界で有名なヤン・チップチェイスの新刊 "The Field Study Handbook"がでる. でるのはうっすら知っていたがしっかりみていなかった。もっと早く、しっかりみるべきだった。

https://www.kickstarter.com/projects/janchipchase/the-field-study-handbook

Kickstarterですごいことになっている。336000ドルを超えるということは、3500万円とか?!

「プロフェッショナルのためだけの本ではない。
旅をしたことがあり、何か機会を逃しているのではないかと感じている人すべての人の本である。」
なんて動画のなかのメッセージもにくい。
欲しい!

Jan Chipchase on Monocle podcast.
https://monocle.com/radio/shows/the-entrepreneurs/293/

I knew that he is going to publish a new book, but i didn't look into it very much. I must have seen it much earlier.
Currently pledge $336,692 in Kickstarter.
https://www.kickstarter.com/projects/janchipchase/the-field-study-handbook

Attractive messages in the promotion movie.
I like sentences like this.

"Is a book about seeking out interesting questions.
Where and how to find the answers.
But it’s not just for professionals.
It’s for anyone who has traveled, and has felt missed opportunities."

CIID Graduate

CIIDを卒業し、日本に帰ってきています。最後は、まさに追い込みでバタバタしていましたが、なんとかカタチにして、発表し、卒業しました。濃密な一年でした。帰国後も忙しくしていたのもあり、まだまともにふりかえられる感じではないのですが、ちょうど先日、CIIDに関心を持った方から連絡をいただき、いくつか質問に答えたので、それを転用加筆する形で書いてみたいと思います。
というのも、少しでもCIIDに関心を持った方に、学生や研究者、アーティストとしてCIIDに絡んでいただきたいなぁという思いがあるからです。来年のCIID Interaction Design Program(1年の教育コース)には日本人学生がいないそうなので、再来年は誰かに行っていただきたいです。
質問いただけると、自分で書くのとは違うニュアンスがでてくるから不思議です。Nさん、ありがとうございます!


Q. CIIDで学んだことはなにか?マインド的なもの、スキル的なものでもかまいません。
マインド的なところが大きいかもしれません。小さなスタジオ的な雰囲気のなかで、20名ほどのクラスメートや講師の人たちと集中的にアイデアをカタチにしていく訓練をいくつも積めたのが大きな収穫だと思っています。それは、プロセスを身体で覚えていくこと、スキルを使いながら学ぶこと、グループダイナミズム、友情など、いろいろ絡まっていますが、一年経ってみて、CIIDという場所に対する記憶や愛情が大きいです。どんな学び舎も、この愛校心みたいなのが大事なのかもしれません。
スキル的には、自分にとっては全く新しいプログラミングを学べたのが良かったなと。そして、新しいAdobe系アプリケーションのいくつかにも慣れることができました。客観的に考えるとまだまだ修練が必要だと思っていますが、オンラインコースも充実していますし、今後レベルアップしていけばと考えています。
むしろ、若くて優秀なプログラマーやデザイナーと一緒に過ごしたことで彼らの技術や姿勢について理解が進んだことが、今後そういった技能を持った方々と仕事をしていく上での収穫かなと思っています。
 あとは、プレゼンなどストーリーテリングもかなり重視されるので、そのことを考えながらつくったり、スケジュール管理したりする力もついたかなと思っています。自分は、リサーチやビデオ編集ぐらいのスキルしかなく、プロジ…

Democratic Innovation

9月末に、知人であるWさんの紹介で某市の若手職員の研修プログラムのお手伝いをしました。テーマは、コペンハーゲン市の参加型デザイン。
CIIDに加え、図書館や文化センター、コミュニティガーデン、イノベーションラボ、コワーキングスペース、デザインセンターなど、コペンハーゲン市の参加型デザイン文化を象徴するようなところをピックアップして、連絡をとり、インタビューや見学を行いました。自分も行ったことがあるところもありましたが、しっかり見学し、話を聞いてみると、新しい発見が多く私も学ぶところが多かったです。
一連の研修ツアーが終わって感じたのは、個人から国まで、この国には様々なレベルで「民主的イノベーション」のような考え方が共有されているのではないかという仮説です。
おそらく、彼らは強く意識しているわけじゃないと思います。それでも、歴史や教育や文化に染み込んでいる「民主的」であったり、「参加型」であったり、「個人の尊厳」などの思想の影を感じぜずにはいられませんでした。
日本語にすると、少し日常から離れた専門用語のように感じる「民主主義」が、日常のなかに普通にある感じです。別の言い方をすると「質素」と言えたりもするのですが、デンマークが幸せな国だ言われている裏には、こうした人々の底辺にある考え方に「信頼」や「民主主義」が根づいているからなのかもしれません。
さらに、「平等」だったり「民主主義」だったりが意識にあるといっても、「みんなで仲良く」だけでは生き残れないご時世というのも心得ていて、各セクターにおいて、イノベーションという考え方もそれなりに共有されているようにも感じました。特に公共セクターの職員の意識の高さには目を見張るものがあります。税金が高いとこうなるものなのだろうか、とそのカラクリ(?)をさらにリサーチしたくなります。
民主的イノベーションは、あくまで私個人の仮説にすぎませんが、こうして多くの施設や取り組みを一気に訪問することは、住んでいてもなかなかできることではなかったので、やっぱり取材は面白いなと再確認するとともに、こんな面白い仕事をさせていただきありがたかったです。
参考までに、訪れたところをいくつか書き出してみます。
Copenhagen Institute of Interaction Design
学校の施設を見学。授業内容やプロジェクトについても…

Industry Project 1st

9月の前半は、Industry Projectでした。企業から案件をいただき、それに取り組むというプロジェクトです。本格的に守秘義務があるので、今のところ詳しい内容は書けません。もしかしたら、数ヶ月後にはオープンにできるかもしれません。去年のIndustry Projectはオープンになっているので、こちらから見ることができます。

授業のプロジェクトでもほとんどの場合、課題設定がされるのですが(Briefと言われます)、クライアントがつくことでよりリアルな仕事に近くなります。発注側とコミュニケーションしながら、かつこちらの能力や残り時間を考えながら最終成果物を仕上げていく緊張感は、これまでとはまた少し違う緊張感でした。

今回は、プロジェクトの中身だけではなく、良いところも悪いところも含め、プロジェクトマネジメントの点でいろいろと考えさせられることが多かったです。

明日から、もう一つのIndustry Projectなので、その前に久々の更新でした。

イノベーションラボとしてのMindlab

Powering collaborative policy innovation: Can innovation labs help?

デンマークの省庁内フューチャーセンター(このペーパーでは、イノベーションラボを自称しています)として知られているMindLabの成り立ちについて書かれた論文をみつけたので読みました。来月、訪問する予定なので、その予習も兼ねて。

Mindlabは元々サイトでの情報発信がしっかりしていて、イベントにも参加し、いくつか出版物も読んでいたので、ある程度知っていたつもりでしたが、この論文は設立の成り立ちやその後の変化などが詳しく書かれています。最初から今のブランドを築いたのではなく、それなりの歴史と紆余曲折、そして戦略があったからなのだなということがわかります。

特に、組織としてはこの10年でいろいろと試行錯誤の上で変わってきたのだというところがよくわかりました。以下の分類が分かりやすいと思います。いわゆるフューチャーセンターのような活動していた第一世代から、よりプロジェクトベースの活動をするようになった第二世代(2008年以降)、そして今は、組織の一部というよりコアの部分にイノベーションを据える第三世代をめざしているようです。


しっかりしたコンセプトを持って、トップマネジメントを巻き込み、かつ状況に合わせて変化したきたMindlabのすごさは、的確で柔軟な現状認識と自己認識だったということも感じました。官僚制度の特性、マネジメントの問題、取り上げる課題など、慎重に検討しつつ挑戦というリスクを取ってきたようにみえます(少なくともこの論文の論調としては)。2008年に大きな変化があって、さらに2012年(この論文の執筆時)にも次なる変化について自己点検と戦略の見直しを行っているとのことです。

各国の研究者や実践家にも有用な資料として、こうして自らの歩みをまとめて発表しているところにも、本気でパブリックサービスを変革するんだという意気込みを感じます。
オーストラリア政府もMindlabにインスパイアされたイノベーションラボを設立予定だそうです。

省庁内外にも活動が知られてきた今後が、さらなるMindlabの本領発揮なのかもしれません。

サービスデザインのパイオニア

先週は、サービスデザイン会社の先駆けと言われている Live|Workのファウンダーでもあり、現在はMethodという会社でPrincipalをしているクリスが来て、いろいろと議論やアドバイスをしてくれました。
週の途中で、インフォーマルなレクチャーもしてくれました。サービスデザインをはじめたパイオニアでもあるので、どんな話をするんだろうと思っていたのですが、サービスデザインという言葉や手法に関しては、むしろ批判的なスタンスを持って仕事をしているようです。一応、念のために確認しますが、否定的ではなく批判的です。以下、いくつか簡単に紹介します。
例えば、サービスデザインの手法について。サービスデザインの仕事のプロセスは3つとか4つとかに分けて言われることが多いけれど、ほんとにそれでいいのだろうか、と話します。インサイトを得て、デザインし、それを現場に落とし込む。そういったサイクルをつくれば、仕事の分担もしやすいし、何よりお金が取りやすい。でも、それが本当に効率的に良いアイデアを生み出す方法なのかと。むしろ、リーンスタートアップのようにぐるぐると仮説と実践を即座に繰り返して行く方がいいのではないかと。
また、サービスブループリントについても批判の目を向けていました。もちろん、サービスの流れをマッピングして可視化することで見えてくる事も沢山ありますし、有用なところが沢山あります。でも、それってあくまで想定的なブループリントでしょと。おっしゃる通り、青写真です。
もっと実際のデータに基づいたインサイトの引き出し方が沢山あるではないか。無料のウェブ解析ソフトを使うだけでもいろんなことがみえてくるはず。あるいは、動きのあるブループリントだってできるじゃないかと。

かなり粗いまとめですが、エスノグラフィーとブループリントというサービスデザインでは中心的な手法について、いくばくかの批判的な意見を持っています。去年のサービスデザインのカンファレンスであるNEXTの講演でも同じようなテーマを話しているので、英語が大丈夫な方はご覧ください。まだ再生回数が50回と、少ないです。こちらです↓。

クリスは元々はプロダクトデザインを学んだそうです。それでも、今の工業製品みたいなものを自分は作りたいのか、大量生産して大量廃棄されるものづくりは何かおかしいんじゃないかと若かりし頃の彼は悩んだそう…